「名前を消せば、顧客のメールを生成AIに貼っても大丈夫?」と迷っていませんか。
最初に行うのは、名前の置き換えではなく、その情報を、その生成AIサービスへ渡してよいかの確認です。
許可された範囲で、仕事に必要な情報だけを残し、氏名・連絡先・取引先を特定する情報などを外します。
この記事では、中小企業で使いやすい「削除」「置き換え」「必要部分の抜き出し」を、3つの架空例で説明します。
マスキングをしても、漏洩リスクがなくなるわけではありません。
マスキングは「何でも入力できる許可」ではない
ここでいうマスキングとは、文章や表の一部を削除したり、「顧客A」などの記号に置き換えたりする作業です。
この記事は、法令上の匿名加工情報・仮名加工情報の作成手順を説明するものではありません。
氏名がなくても、珍しい職種、所在地、取引額、出来事の組み合わせから、相手や案件が分かることがあります。
会社の未公開価格や認証情報は、名前と別の問題です。
個人情報保護委員会は、生成AIサービスの利用について注意喚起を公開しています。
取り扱う情報や利用条件を確認し、判断がつかない場合は社内の情報管理担当者へ相談しましょう。
出典:個人情報保護委員会「生成AIサービスの利用に関する注意喚起等について」/確認日:2026年10月11日。
会社全体の入力ルールが未整備なら、先に生成AIの情報漏洩対策チェックリストを確認してください。
残す情報は、依頼する作業から逆算する
返信の言い回しを考えたいだけなら、住所も電話番号も不要です。
見積もりの条件を整理したい場合でも、原本を丸ごと渡す必要があるとは限りません。
| 作業 | 残す候補 | 外す・別管理する候補 |
|---|---|---|
| お断りメールの下書き | 相手の要望、断る理由、文体 | 氏名、アドレス、署名、過去のメール全文 |
| 商談の論点整理 | 検討事項、決定・未決定の区別 | 固有名、非公開の価格、相手の内部事情 |
| 問い合わせ件数の分類 | 問い合わせの種類、一般化した内容 | 顧客ID、注文番号、個別の連絡先 |
この表は当サイトの整理例です。
実際に残してよい項目は、契約・社内規程・サービスの利用条件で判断します。
3つの架空例:名前を消すだけで終わらせない
以下は説明用の架空データです。
実在の顧客・商談・問い合わせではありません。
例1:問い合わせ返信は署名と履歴を外す
入力前の原文に、次の情報が含まれていたとします。
顧客Aの担当者名・メール・携帯番号が付いた問い合わせ 「商品の色を変更できますか。次回の注文から変更したいです」 下部に住所入りの署名と過去5往復のメール履歴
返信案に必要なのが「変更可否をまだ確認していない」という状況なら、入力用の文は次の程度に絞れます。
顧客Aから、次回注文の商品色を変更できるか問い合わせがあった。 当社では変更可否と追加費用をまだ確認していない。 回答を確約せず、社内確認後に連絡する旨の丁寧な返信案を作る。 宛名・署名は書かない。
正式な宛名と署名は、生成AIの外で担当者が戻します。
履歴に別案件の情報がないかも見てください。
例2:商談メモは一貫した記号と未確認表示を使う
「当社」「先方」「Aさん」をバラバラに使うと、誰が何をするのか分かりにくくなります。
同じ相手は同じ記号にそろえます。
当社担当B:サンプル送付の可否を確認する。 顧客A:仕様案を社内で検討する。 数量:未確定。価格:入力しない。 希望時期:来月。ただし当社の対応可否は未確認。
置き換え対応表を作る場合は、社内のアクセス制限された場所に保管し、生成AIには一緒に渡しません。
案件自体が機密なら、記号に変えても入力を止めます。
例3:分類だけなら集計・一般化できないか考える
「注文番号123の人が、特定の日に特定店舗で受け取れなかった」という個別記録を、そのまま分類用データにする必要はありません。
問い合わせ1:受取方法の変更に関する相談 問い合わせ2:配送予定日の確認 問い合わせ3:商品色の変更可否の確認
具体的な日時や店舗を外しても目的を果たせるなら、一般化します。
ただし、原因調査に日時が必要な場合などは、勝手に削って分析結果を変えないでください。
機密を含む詳細調査は、会社が承認した環境で行います。
作業は社内で済ませてから生成AIに渡す
社内でコピーを加工し、記号に変えても特定されないかと利用許可を確認します。
対応表は社内で別管理し、不明なら入力しません。
生の顧客情報を未承認の生成AIに貼り、「個人情報を消して」と頼むのは順番が逆です。
マスキングを依頼した時点で、原文を送信してしまいます。
- 社内の作業場所で原本とは別の入力用コピーを作る。
- 必要な段落だけを抜き出す。
- 氏名・署名・連絡先・固有名・識別番号などを確認する。
- 必要に応じて記号化し、文脈から特定されないかを読み直す。
- 利用許可と入力範囲を確認してから、承認済みの生成AIへ渡す。
表では、不要な列や別シートも確認します。
PDFや画像に黒い図形を重ねただけのファイルは、情報が本当に除去されたとは限りません。
社内で確認できる適切な処理を使うか、必要な文章だけを別のテキストとして用意してください。
自動マスキングにも、表記や文脈による見落としがあります。
自動処理の結果を、そのまま安全判定にしないことが大切です。
参考:SoftBank「PIIマスキング」に関する解説/確認日:2026年10月11日。
上の手順と具体例は当サイト独自の提案です。
入力前に確認する5つのこと
- 利用するサービスとアカウントが社内で認められている。
- その作業に必要な項目だけを残した。
- 署名、履歴、別シート、添付ファイルも確認した。
- 記号に変えても、文脈から相手や機密案件が分からないか確認した。
- 判断できない項目は入力せず、担当者へ相談した。
名前を消した後の文章も、誰でも見られる共有場所へ置かないでください。
元情報との対応が分かるファイルは、特に取り扱いを分けます。
よくある疑問
公開されている会社名も必ず消す?
公開情報かどうかだけでなく、その会社との未公開の取引関係が分からないかを見ます。
一般的な文章表現の相談なら「取引先A」で足りる場合があります。
名前を戻す作業も生成AIに頼んでいい?
元情報の再入力になるため、別途利用許可が必要です。
名前や連絡先だけなら、担当者が社内で戻す方法から検討しましょう。
最初は「署名なしの架空メール」で練習する
今日の一歩は、実データではなく、架空メールから不要な項目を外す練習です。
社内で「残す」「置き換える」「入力しない」の判断をそろえてから実務へ移します。
入力後の文章も確認が必要です。
続けて生成AIの回答を確認する方法を使い、事実を増やしていないかまで見てください。
参考資料
確認日:2026年10月11日。
個別の法令適合性を保証する記事ではありません。