ExcelやCSVの表記ゆれをAIで直すときは、元データを残し、統一してよい名称・確認が必要な重複・埋めてはいけない空欄を分けることから始めます。
「東京」と「東京営業所」が別々に集計される。
同じ受注番号の行が複数ある。
金額が空欄なのに合計だけは出る。
こうした状態で分析を始めると、きれいなグラフを作れても元の数字が信用できません。
この記事では、集計前の小さな表を整える方法を説明します。
例はすべて架空で、実際の顧客や受注データではありません。
AIに本番CSVを丸ごと送らずに、整形ルールを相談する練習にも使えます。
具体的な操作、適用条件、例外、注意事項は各見出しも確認してください。
元ファイルを残し、番号は文字列として取り込む
最初に、受け取ったCSVをそのまま保存し、作業用のコピーを作ってください。
編集後に何が変わったかを説明するには、変更前のデータが必要だからです。
受注番号や商品コードの「0012」は、数量の12とは違います。
CSVをExcelで開く方法によっては、先頭のゼロがなくなるなど、自動変換が起きる場合があります。
Microsoftの公式説明では、テキスト・CSVの取り込み時に、対象列を文字列として扱う方法が案内されています。
自分のExcelに「データ」→「テキスト/CSVから」がある場合は、取り込みプレビューや変換画面で番号列の型を確認します。
自動で数値に変えた手順がある場合は、元の番号を保持できるように置き換えてください。
画面や利用可能な方法はExcelの版・OSで異なります。
既に「0012」が「12」になった表に文字列の書式を設定しても、元の番号が何桁だったかは分かりません。
原CSVや台帳に戻って確認しましょう。
架空の7行から、直せるものと保留するものを分ける
次の表は受注明細をイメージした練習用データです。
各行に確認用の行IDをつけています。
「金額未入力」は0円ではなく、金額がまだ入力されていないという意味です。
| 行ID・受注番号・明細番号 | 営業所 | 金額 |
|---|---|---|
| r1/0012/1 | 東京 | 10,000円 |
| r2/0012/2 | 東京営業所 | 5,000円 |
| r3/0013/1 | 大阪 | 8,000円 |
| r4/0014/1 | 東京営業所 | 金額未入力 |
| r5/0015/1 | 東京 | 0円 |
| r6/0016/1 | 東京営業所 | 12,000円 |
| r7/0016/1 | 東京営業所 | 12,000円 |
まず言えるのは「7行あり、金額が入力されている6行の合計は47,000円」ということです。
この47,000円は、未入力金額を含む正しい総売上とは限りません。
重複の疑いも残っています。
一方、この表だけではr6とr7が重複取り込みなのか、同じ番号を使った別の記録なのか確定できません。
AIに「同じ行を消して」と指示するのは、まだ早い段階です。
表記ゆれは、確認済みの対応表で直す
「東京」と「東京営業所」が同じ拠点を表すことを、拠点一覧やデータ担当者に確認します。
この例では同じ拠点と確認できた設定にして、正式名を「東京営業所」にそろえます。
| 元の表記 | 統一後 | 根拠 |
|---|---|---|
| 東京 | 東京営業所 | 拠点一覧で同一と確認済み |
| 東京営業所 | 東京営業所 | 正式表記 |
| 大阪 | 大阪営業所 | 拠点一覧で同一と確認済み |
これが表記の対応表です。
AIに似ている名前を探してもらうことはできますが、同じ拠点かどうかは人が確かめます。
「東京支店」と「東京営業所」を、似ているという理由だけでまとめてはいけません。
Excelでは元の営業所列を残し、隣に「統一後営業所」を作る方法が分かりやすいでしょう。
今回のように候補が少ない練習表なら、対応表を見ながら入力できます。
毎月大量に処理する場合は、確認済みの対応表を使った参照式やPower Queryを検討してください。
前後の空白も一律削除せず、まず値の一覧で確認します。
品名・コードの途中にある空白は意味を持つことがあり、すべて消す処理とは分ける必要があります。
重複は「何を1件と数えるか」を決めてから扱う
この例で受注番号0012を理由にr2を消すと、別の商品明細5,000円が抜け落ちます。
r1は明細1、r2は明細2なので、受注番号が同じでも別の行です。
受注明細の確認には「受注番号+明細番号」という組み合わせを使います。
ただし、実際のシステムでは訂正番号や納品回なども必要かもしれません。
どの項目で1件を識別するかを、元データの仕様に合わせて決めてください。
| 対象 | 判断と次の確認 |
|---|---|
| r1とr2 | 明細番号が違うため、両方残す |
| r6とr7 | 同じ受注・明細番号。重複候補として元台帳・取込記録を確認する |
| 元台帳でr7の二重取込と確認できた場合 | 作業用集計からr7だけを除外し、根拠と確認者を記録する |
「除外」は、元ファイルを消すという意味ではありません。
作業用表に除外理由の列を設け、集計対象を区別すれば、後から判断を見直せます。
逆に、元台帳が確認できないならr7は保留です。
AIが重複だと判断したことだけを根拠に、正式な集計から削除しないでください。
空欄は0円や平均値で埋めない
r4の未入力とr5の0円は分けます。
前者は金額が不明、後者は0円と入力されている状態です。
0円の理由も必要に応じて元台帳で確認します。
AIに「欠損を補って」と依頼すると、平均値や近い行の数字が提案される場合があります。
売上・請求などの実績集計では、推定値を確定金額として混ぜないでください。
この例ではr4を未入力のまま残し、「担当者に原記録を確認」とメモします。
元台帳で金額が確定したら、その根拠に基づいて更新します。
推計を行う別の分析でも、実績と推計値は列を分ける必要があります。
AIには「整形ルールと確認表」を頼む
最初から完成CSVを求めるより、何を変えるかの一覧を出してもらうと、判断を点検しやすくなります。
以下は架空の受注明細です。集計前の確認を手伝ってください。 元データの削除・上書きや、金額の推定補完はしないでください。 列:行ID、受注番号、明細番号、営業所、金額。 r1,0012,1,東京,10000 r2,0012,2,東京営業所,5000 r3,0013,1,大阪,8000 r4,0014,1,東京営業所,空欄 r5,0015,1,東京,0 r6,0016,1,東京営業所,12000 r7,0016,1,東京営業所,12000 確認済み対応:東京→東京営業所、大阪→大阪営業所。 受注番号は先頭ゼロを含む文字列です。 1明細の確認キーは「受注番号+明細番号」です。 同じキーの行でも、重複と確定しないでください。 出力: 1. 表記を変更してよい行と、その変更内容 2. 重複候補と確認すべき元記録 3. 空欄と0円を分けた確認表 4. 作業前後に照合する件数・金額の一覧 空欄は空欄のまま残し、未確認事項を明示してください。
ここでAIが「重複を削除しました」と答えたら、入力した禁止事項に反しています。
作業は進めず、削除しない確認表に直すよう依頼します。
実務では列名と架空の数行だけで相談し、確認済みルールを自分のExcelへ適用する方法もあります。
実データを使う場合は、送信先・保存・利用条件と社内の入力許可を事前に確認してください。
整形後は「変わるはずのもの」だけ変わったか照合する
表記統一だけなら、件数と入力済み金額の合計は変わらないはずです。
重複を除外する場合は、確認した行の分だけ変わる必要があります。
以下は、元台帳でr7が二重取込だと確認できた場合の例です。
| 段階 | 集計対象行数 | 入力済み金額の合計 |
|---|---|---|
| 取り込み直後 | 7行 | 47,000円 |
| 表記だけ統一 | 7行 | 47,000円 |
| 確認済みr7を集計から除外 | 6行 | 35,000円 |
この時点でもr4の金額未入力は1行残ります。
35,000円を最終的な総売上と報告せず、「重複除外後の入力済み金額合計。未入力1行あり」と注記してください。
合計が変わらなくても、誤った営業所へ割り当てた可能性は残ります。
変更したr1・r3・r5の名称、r1とr2の明細が両方残っていること、受注番号の先頭ゼロも個別に確認します。
最後に、元データ・整形ルール・除外記録・作業用表を分けて保存します。
集計担当者が「どの行を、なぜ変えたか」をたどれれば、翌月の同じ作業にもつなげられます。
まずは7行の練習表で、変更してよい表記と保留すべき行を分けてみてください。
整形後に集計条件を決める段階は、AIでExcelのSUMIFSを使う方法で解説しています。
AIへの相談を、根拠のないデータ修正にしないことが出発点です。