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商談ではお客様の困りごとを聞けたのに、提案書を開くと手が止まる。
いつもの会社紹介を貼り付けるだけでは、今回の相談に合う提案にならない。
営業と現場を兼務していると、こんな場面があるのではないでしょうか。
生成AIで営業提案書を作るなら、「商談メモを整理する → A4一枚分の下書きを作る → 人が条件を確認する」の3ステップから始めましょう。
AIに任せるのは、聞いた話を分かりやすい順番に並べ、文章にする部分です。
価格・納期・対応範囲を決めるのは、自社の担当者です。
この記事では、小さな清掃会社を例に、入力する情報、コピーして使える指示文、提案書の完成例、提出前の確認まで紹介します。
まずは架空の情報で試し、自社で使える形に置き換えてください。
具体的な操作、適用条件、例外、注意事項は各見出しも確認してください。
まず作るのは「相談内容を確認するための提案書」
最初から立派なスライドを何十枚も作る必要はありません。
まずは、お客様に「こちらの困りごとを理解している」「何を提案されているか分かる」と確認してもらえる、短い提案書を目指します。
この記事のA4一枚案には、次の5項目を入れます。
- お客様から聞いた困りごと
- その困りごとに対する提案
- 対応する範囲・含まれない作業
- 費用・日程などの確定事項と未確定事項
- 次に確認・相談したいこと
この段階の提案書は、正式な見積書や契約書の代わりではありません。
複雑な仕様や条件は、別紙で整理します。
また、AIに「A4一枚」と伝えるだけで印刷レイアウトまで保証されるわけではありません。
文章を作った後、文書作成ソフトで用紙サイズや余白を設定し、印刷プレビューで確認します。
ステップ1|商談メモと自社の対応条件を分けて整理する
「お客様の希望」と「自社が約束できること」は、別々に書きましょう。
この区別がないと、AIが希望を決定事項のように表現しても気づきにくくなります。
例:社員6人の清掃会社が、オフィス清掃の相談を受けた
以下は、手順を説明するために作成した架空の事例です。
会社名、人数、相談内容、対応条件はすべて仮の設定で、実在企業の導入実績や成果ではありません。
社員6人の「サンプル清掃」の社長が、約20人が働くX社から相談を受けました。
商談後に残したメモは、次のような内容です。
【商談後のメモ(架空)】 ・社員が交代で掃除。忙しい週は後回しになるとのこと。 ・受付と会議室の床のほこりが気になる。 ・まず月2回くらい、外部に頼めるか知りたい。 ・作業は18時以降を希望。鍵を預けられるかは未確認。 ・料金はまだ案内していない。現地も未確認。 ・次回は、現地確認の日程を相談する。
ここで「月2回・18時以降で契約が決まった」と扱ってはいけません。
決まっているのは、お客様がそう希望していることです。
自社の作業条件と合わせて整理すると、提案に使う情報が見えてきます。
| 情報の種類 | 今回の内容 | 提案書での扱い |
|---|---|---|
| お客様から聞いたこと | 社員による清掃が後回しになり、受付・会議室の床が気になる | 「伺った課題」として記載 |
| お客様の希望 | 月2回程度、18時以降の作業 | 希望・相談段階と明記 |
| 自社で確認した対応内容 | 床の掃除機がけ、床材に合う拭き掃除、ごみ回収。平日18時以降は相談可能 | 対象範囲の案として提示。作業条件は現地で確認 |
| 自社の対象外作業 | 高所の窓清掃、床のワックスがけは今回の案に含めない | 含まれない作業として記載 |
| まだ確認していないこと | 床材・面積、入退室方法、作業日・人数、料金、開始日 | 現地確認や見積もりで決める事項として残す |
「きれいなオフィスにしたい」という希望だけでなく、どこに困っているか、何を頼みたいか、何が未定かを書きます。
自社の得意分野や実績を加える場合も、確認できる情報だけを使ってください。
実際の商談メモを入力する前に、情報の扱いを確認する
商談メモには、お客様の名前、連絡先、予算、未公開の計画などが含まれることがあります。
実データを使う前に、自社が認めたAIサービスか、入力が許可された情報か、保存・学習利用などの条件はどうなっているかを確認しましょう。
判断できない情報は入力せず、まずこの記事の架空のメモで練習します。
IPAの「AI利用者のためのセキュリティ豆知識」でも、クラウド型のAIに営業秘密を伝えるリスクと、利用規約や設定の確認が説明されています。
名前を「X社」に変えただけで、機密性のある内容まで入力してよいとは限りません。
参考:IPAの解説資料
社内の使い方がまだ決まっていない場合は、生成AIの契約と情報管理を整える方法も参考にしてください。
ステップ2|用途と禁止事項を伝えて、A4一枚分の下書きを作る
AIには「営業提案書を作って」だけでなく、誰に、何のために、どの情報を使い、何を補ってはいけないかまで伝えます。
今回は契約を即決してもらう資料ではなく、現地確認に進むための相談用の提案です。
コピーして試せる指示文(プロンプト)
次の指示文は、上の架空の情報を組み込んでいます。
まずはそのまま試し、業務で使うときは、入力を許可された自社の情報に置き換えましょう。
次の情報だけを使い、オフィス清掃の営業提案書の下書きを作ってください。 読み手はX社の総務担当者です。 目的は、相談内容と対応範囲の案を確認してもらい、現地確認の日程を相談することです。 【お客様から伺った内容】 ・約20人が働くオフィスで、社員が交代で清掃している。 ・忙しい週は清掃が後回しになり、受付・会議室の床のほこりが気になる。 ・月2回程度、18時以降の作業を希望している。契約条件は未決定。 【自社で確認した対応内容】 ・床の掃除機がけ、床材に合う拭き掃除、ごみ回収に対応する。 ・平日18時以降は相談可能。具体的な作業日・人数は未定。 ・高所の窓清掃、床のワックスがけは今回の案に含めない。 【未確認・未確定】 ・床材、面積、入退室方法、鍵の預かりの可否。 ・料金、作業日・人数、開始日。現地確認後に見積もりと条件を提示する。 ・次回は現地確認の日程を相談する。具体的な候補日は未定。 【必ず守ること】 ・お客様の希望を、合意済みの条件として書かない。 ・未確認事項は「現地確認後に決定」「要確認」などと明記する。 ・料金、日付、導入実績、削減率、効果保証を作らない。 ・入力にないサービスや作業を追加しない。 ・対象範囲と、含まれない作業を区別する。 ・大げさな営業表現を避け、短い見出しと平易な文章で書く。 【出力】 1. 提案書の下書き:本文600~800字程度を目安に、 「伺った課題/ご提案/対応範囲/費用・日程/次の手順」の順で書く。 2. 社内確認用の一覧:お客様や自社に確認が必要な項目を、提案書とは分けて出す。 文字数は目安です。必要な条件を削って短くしないでください。
重要なのは、提案書と「社内確認用の一覧」を分けることです。
確認漏れを減らしつつ、社内の作業メモをそのままお客様に渡さずに済みます。
ただし、指示を入れても誤りを完全に防げるわけではありません。
人が確認・修正した提案書の完成例
以下は、先ほどの架空の設定をもとに、本記事用に作成・編集した相談用の完成例です。
特定のAIが実際に出力した結果や、受注につながった実例ではありません。
AIの回答はサービスや入力によって変わるため、この形を確認の目安にしてください。
X社様向け 受付・会議室の定期清掃のご提案(相談用) 提案者:サンプル清掃 ■伺った課題 社員の皆様が交代で清掃されていますが、忙しい週は後回しになり、受付・会議室の床のほこりが気になると伺いました。月2回程度、18時以降の外部清掃をご希望とのことです。 ■ご提案 受付・会議室の床清掃とごみ回収を、月2回の定期清掃として検討する案をご提案します。日常の清掃のうち、どの作業を外部に任せるかを整理するためのたたき台です。回数と作業時間は、現地の状況と双方の条件を確認したうえで調整します。 ■対応範囲 今回の案は、受付・会議室の床の掃除機がけ、床材に合う拭き掃除、ごみ回収を対象とします。対象となる場所、床材、面積、作業方法は現地で確認します。高所の窓清掃と床のワックスがけは、この案には含めていません。 ■費用・日程 料金は、現地で対象範囲と作業条件を確認した後、正式な見積書でご提示します。平日18時以降の作業はご相談いただけますが、具体的な作業日、作業人数、開始日は未定です。入退室方法や鍵の取り扱いも含め、実施条件を確認してから決定します。 ■次の手順 まずは現地確認の機会をいただき、対象場所とご希望を確認できればと考えています。ご都合のよい日程をご相談ください。その際に、清掃の回数、作業時間、入退室方法、ごみの回収・処分範囲などを伺い、作業内容と見積もりを具体化します。 本書は相談用の案です。費用・作業条件は見積書等で別途確認し、双方の合意後に実施します。
この例では、会社の強みを並べる前に、お客様の困りごとを置いています。
また、「月2回」は提案段階、「料金」は見積もり前、「18時以降」は相談可能と書き分けています。
文章が上手かどうかより、相手が希望・提案・確定事項を取り違えないことが大切です。
ステップ3|元のメモと照合し、約束できる条件だけを残す
AIの下書きを、そのまま提出しないでください。
元の商談メモ、自社の対応条件、必要に応じてお客様への確認結果を並べ、一文ずつ照合します。
IPAの資料でも、生成AIの回答に誤りが生じることと、利用時の注意・確認の必要性が説明されています。
参考:IPA資料の6〜7ページ
今回のメモなら、こんな表現は修正する
次の表は、誤りを見つける練習用です。
AIで必ず出る表現という意味ではありません。
| 下書きにあったら確認する表現 | 問題点 | 修正・確認の仕方 |
|---|---|---|
| 月額12,000円で対応します | 料金を案内していない | 金額を削除し、現地確認後に正式な見積もりを提示すると書く |
| 来月から毎週訪問します | 開始日は未定。希望は月2回程度 | 月2回を検討する案に戻し、開始日は別途調整とする |
| 清掃時間を50%削減できます | 効果を裏付ける資料がない | 削減率と保証表現を削除。どの作業を任せるかを具体的に書く |
| 鍵をお預かりし、完全無人で作業します | 鍵の預かりや入退室条件が未確認 | 実施を約束せず、入退室方法は要確認とする |
「今すぐ導入すべきです」「必ず満足いただけます」のような強い言い切りも、本当に必要か見直します。
相談用の提案書なら、何を確認すると次に進めるかが分かる文章のほうが、今回の目的に合います。
提出前のチェックリスト
- 課題:お客様が話していない困りごとを、勝手に追加していないか
- 条件:お客様の希望を、合意済みの価格・納期・仕様として書いていないか
- 対応範囲:担当者・現場が実施できる内容か。対象外の作業が紛れ込んでいないか
- 根拠:数字・実績・効果について、確認できる資料があるか
- 未定事項:何を、誰に確認する必要があるかが明確か
- 宛先・情報:会社名、担当者名、日付は正しいか。別のお客様の情報や社内メモが残っていないか
- 表示:印刷・PDFプレビューで文字や表が切れず、無理なく読めるか
- 承認:必要な社内確認を終え、誰が提出を判断したか分かるか
AIに「誤りを確認して」と頼むことは補助になりますが、AIによる再確認だけで提出可とは判断しません。
小さな会社で社長が一人で確認する場合も、元のメモと照合した版を保存し、確認した項目と日付を残しておきましょう。
うまくまとまらないときは、情報か目的を見直す
どのお客様にも使えそうな文章になってしまう
「高品質なサービスで課題を解決します」だけになったら、お客様の困りごとが具体的に入力されているか確認します。
今回なら「清掃が後回しになる」「受付・会議室の床が気になる」です。
入力にない理由をAIに想像させず、分からない点はお客様に確認してください。
長すぎてA4一枚に収まらない
まず、会社紹介の重複や抽象的な挨拶を削ります。
AIに短くしてもらうときは、「対象範囲・対象外作業・未確定事項・次の手順は残し、重複した説明だけ短くしてください」と伝えましょう。
それでも条件が多い場合は、無理に一枚に詰めません。
要点を一枚にまとめ、詳細条件を別紙にします。
文字を小さくして読めなくするより、相手が判断できる情報を残すことを優先してください。
自社の商品・サービスに置き換えられない
清掃以外でも、まず「困りごと/対応できること/対応しないこと/未定事項/次の確認」の5つを埋めます。
例えば印刷会社なら、相談内容は「店頭配布用のチラシを作りたい」、未定事項は部数・用紙・原稿・納期、次の確認は仕様の打ち合わせ、という形です。
AIに商品を選ばせる前に、自社が提案できる範囲を人が決めましょう。
まとめ|まず一件、商談メモから相談用の案を作ってみよう
生成AIを営業提案書に使う第一歩は、全部を自動化することではありません。
聞いた内容を整理し、文章の下書きを作り、約束できる条件を人が確かめることです。
まずはこの記事の架空の清掃会社のメモで試してください。
出てきた下書きを完成例やチェックリストと比べ、「希望が決定事項になっていないか」「ないはずの金額が追加されていないか」を確認するところまでが練習です。
その後、入力を許可された情報だけで、自社の一件に置き換えてみましょう。
提案書に添えるメールを作る場合は、生成AIでビジネスメールを作る方法と送信前チェックが役立ちます。
一人で試した方法を社員にも広げたい場合は、生成AIの社員教育を1人から始める手順を確認してください。
業務を一つ選んで練習する進め方と、体系的に学びたい場合の講座選びを紹介しています。
リンク先には広告を含む講座紹介がありますが、今回の練習のために講座へ申し込む必要はありません。
参考資料
情報の扱いと生成AIの回答を確認する必要性について、次の一次資料を参照しました。
本記事の清掃会社、プロンプト、提案書、確認表は、説明のために独自に作成したものです。
- IPA「AI利用者のためのセキュリティ豆知識」(2026年4月2日公開。PDFの6〜7ページ、11ページを参照)
参考情報の確認日:2026年10月5日。
実務で使う際は、利用するサービスの最新の条件と自社のルールを確認してください。